●マメナシ(学名 Pyrus calleryana Decne.)


写真1段目左
 東尾張病院のマメナシ 樹高約12m
写真1段目中 蛭池北畔のマメナシ 樹高約7.6m
写真1段目右 大牧町のマメナシ、手前に一本、奥に一本。樹高共に約8m

写真2段目左 マメナシの実 径5〜6mm前後
写真2段目 マメナシの花 同じバラ科の桜とよく似ているがこちらの方がやや白っぽい。
写真2段目 自生したマメナシの苗を年度別に色別のマーカー棒を刺し現地での生育を見守っている。

写真3段目左 すいどうみち緑道のマメナシ(2004年撮影) 樹高約8m
写真3段目
 小幡緑地(本園)守山スポーツセンター東のマメナシ 樹高約10m 同公園のシンボルツリー
写真3段目 小幡緑地(本園)バーべキュー場南のマメナシ 樹高約9m

写真4段目左 小幡緑地(西園)入口のマメナシ 樹高約12m
写真4段目中 庄内川吉根河川敷駐車所のマメナシ 樹高約7m
写真4段目右 小幡緑地(本園)緑ヶ池南畔のマメナシ(2004年撮影)

写真5段目左 風越池東畔、秋落葉したマメナシ 樹高約4m
写真5段目中 上記マメナシの木製タグ「まめなしのある風景守山・マメナシNo.12」
写真5段目右 マメナシの実、秋完熟すると黒くなる。径5〜6mm前後

写真6段目左 大森雨池東畔のマメナシ。移植された物でマメナシの数にはカウントされない。

写真6段目右 小幡緑地(本園)竜巻池東畔湿地のマメナシ群。


現在の伊勢湾を含む巨大な遠浅の淡水湖(1万年〜500万年位前)の水辺に生育していて、地球寒冷期の残存植物。伊勢湾をとり巻く周伊勢湾要素植物といい、東海丘陵要素植物とも呼ばれ、現在守山区以外の愛知県内では尾張旭市・瀬戸市・小牧市・新城市・西尾市・大口町で確認されており、三重県・岐阜県にも自生地があり、海外ではベトナム・朝鮮半島、中国の一部に自生している。

樹高は8〜10m位、バラ科ナシ属の落葉小高木。開花時期は4月上旬、桜(ソメイヨシノ)が満開を過ぎた頃から咲き始め、桜と同様バラ科に属しており、大きさ形は酷似している。
花は桜の薄ピンクに比べ、やや緑がかった白色に近く、葉は卵型の長楕円で長さは4〜9cm位。
6月頃に径10mmほどの球形の実を付けるが未成熟の実は非常に渋く、一説には若干のシアン系毒性があると言われる。
実は秋に完熟すると黒くなりますが食べられるほどの味ではなく渋さが残ると言いやがて熟して落下、成長は非常に遅く一年で幹回りが1cmほどと言われる。

マメナシは自家受粉では結実しにくく自家不和合(自分で種子が作れない)で、果肉が固くならないうちにほぐれるなど条件を必要とする。
発芽率は10%位で果肉を取り除くと発芽率が上がると言われ、鳥などに運ばれ糞として地上に落とされた種は発芽率が高い。
環境としては湿地を好む湿地依存種で日照も必要。

愛知県版レッドリストでは絶滅危惧IA類、名古屋市版レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定されている。日本の梨の野生種はヤマナシ(ニホンヤマナシ)で花柱(めしべ本体)が5本あるが、それに対してマメナシの花柱は2〜3本、これらが交雑してアイナシと呼ばれるものもあるが、マメナシが現在の梨の直接的祖先には当たらない。

守山区のマメナシ
蛭池
(御膳洞公園・守山区御膳洞)は国内最大の群生地で、1973年(昭和48)9月に研究家の大岡幸雄氏により大森八竜湿原で発見され、翌1974年(昭和49)2月、大森北東の御膳洞の蛭(ひる)池(尾張旭市との境・現緑地公園東園)でもマメナシの大群落が発見され翌3月一般に公開された。
折しも一帯での清掃事業所建設を巡り環境保護か公益優先かの議論が起き市の環境整備計画が見直される切っ掛けともなった。
発見当時は120〜150本程あったが現在では周辺の宅地開発などにより湿地が失われ約60本ほどに減少している。
また過去には絶滅を防ぐためと無秩序に幼木の繁殖、移植がされたがそれらが現地のマメナシと交雑すると遺伝子レベルでの変化が起きるので現在は各自生地では「持ち込まない 持ち出さない」を合言葉に自生地での自然繁殖に努めている。
現存の個体数は300〜350本位と言われ、その半数近くが守山区にある。
※本数は研究者により異なる。

小幡緑地公園(本園・守山区川字東山)の緑ヶ池・竜巻池を中心に一帯では現在42本のマメナシがあるが、過去に移植されたと思われるマメナシ10本ほど間引きをされた。守山スポーツセンター東のマメナシは樹齢推定で150〜200年位で樹高10m、幹回り153cmで同公園のマメナシのシンボルツリーとなっている。

大森雨池(雨池公園)のマメナシは近隣の道路拡幅工事などで10数年前、11本のマメナシが池東側に移植されたが、2本が枯れ現在池の東側に8本、公園側に1本が現存する。(移植された物なので区内のマメナシの本数にはカウントされない)

他に、風越池:12本(下志段味長廻間)、吉根:2本・平池東:1本(吉根・深沢)、東尾張病院周辺:8本(大森北)、八竜湿原・新池周辺:22本(大森八龍)、すいどうみち緑道周辺:3本(大牧町・東山)、小幡緑地西園:2本(牛牧)その他個人宅にもある。

現在区内ではこれらマメナシを守るため、ボランティアによるマメナシを守る会が結成され、幼木の保護、盗掘の監視また日当りをよくし繁殖を促するための周辺樹木の伐採など研究者・行政と共に活動をしている。
2018年11月には区内大森の金城学院大学にてマメナシの保全・保護に取り組んでいる県内の小牧市・尾張旭市・瀬戸市、他県外の桑名市などの保全団体の方々100名余の方々が集まり「マメナシサミットin守山」が開催され、事例報告、マメナシ保全のガイドラインの策定、意見交換などを行われ、名古屋工業大学の増田理子教授によるマメナシ保全のガイドラインが示され移植の禁止などが確認された。
また2019年(令和元)9月、同大学で「湿地サミットin名古屋」が開催され県内各地から300名余が参加した。

海外では桜と同様に花がきれいな事もあり、calley pearと呼ばれ中国・ベトナム産のマメナシが国内や北米・ヨーロッパ各地で街路樹として植えられている。またニューヨークの旧世界貿易センターの地には9.11のテロにも負けず生き残ったグランドゼロのマメナシがシンボルとして今も春には花をつけると言う。

係わるボランティア団体
・愛知守山自然の会
・蛭池のマメナシを守る会
・竜巻池を美しくする会
・風越池を美しくする会
・水源の森と八竜湿地を守る会 など


参考資料
石原則義(愛知守山自然の会)
「守山区周辺のマメナシ自生地分布」なごやの生物多様性報告資料(2014・2016・2021)